小夜子生物学序説

 『六番目の小夜子』を客観的に分析しよう計画第二弾である。今回は本テクストを比較するのではなく、本質そのものを探っていくことにする。客観的な本質を考察するためにはすなわち『小夜子』そのものの構造を知る必要がある。つまりテクストそのものを生物学的に理解しなければならないのだ。ということで、今回はあらたな試みとして生物学的『六番目の小夜子』論を展開してみたい。


『六番目の小夜子』の生息地はどこか?

 ようは、水中にいるのか、陸地の生物なのかということ。これは簡単である。この本を水につけようとするバカはいないだろう。あきらかに『小夜子』は陸地でなないと生きてはいけない。エラも見たところなさそうだし。


『六番目の小夜子』は脊椎動物なのか?

 これは難しい問題である。一見するとたしかに、背の部分が堅いので脊椎があるように思える。が、よくよく考えてみて欲しい。堅いのは背だけではなくて、表紙も同様である(ハードカヴァーなんだから当然)。つまり、これは表皮が固まったものであると考えることができる。……では、『小夜子』は甲殻類なのであろうか? が、先にも述べたとおり、『小夜子』は水生ではない。エビやカニのごとく水中や水辺で生息しているはずがないのである。と、いうことは結論は一つである。


『六番目の小夜子』は昆虫(甲虫)である

 つまり、カブトムシやクワガタの仲間であると考えるべきだろう。表紙の色もどこかそれっぽいし。また、昆虫の足が6本であることもこの説の正しさを補強してくれている。そもそも、『小夜子』の主要登場人物は何人であったか? 「沙世子・秋・雅子・由紀夫・黒川・美香子」……丁度6人である。そう、それぞれが足一本に相当しているのだ。無論タイトルにある『六番目』というのも、まさにそのことを意味している。


じゃあ旧『小夜子』は何なの? 表紙は堅くないんだけど。

 おそらく旧『小夜子』は新『小夜子』の幼虫である。外皮が柔らかいことからも容易に推測できる。つまり、昆虫(甲虫)・小夜子は新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズに卵を産み付ける。それがふ化して、幼虫たる旧小夜子が誕生するのである。


『六番目の小夜子』の一生は?

 小夜子の特長は幼虫の時期が6年と異様に長いということである。その間この幼虫は書店から古本屋へと渡り歩いていくことになる。なお、最近この幼虫小夜子の乱獲が激しいようで、既に結構な値段が付いているとのこと。ここはエコロジー的視点を持って、むやみに捕獲しないようみなさんには要請したい。


さなぎにはならないの?

 無論、昆虫であるからには幼虫からさなぎへと脱皮するはずであるのだが、目撃例はまだない。おそらく、文庫本の皮を脱ぎ捨て、ハードカヴァーへと脱皮する中間の時期があると思われる。私の予想では、これは新潮社の奥深くにて行われているに違いない。なお、作中加藤なる登場人物が出てきて、後に物語から退場するのだが、これがさなぎの抜け殻ではないのかという説もある。


新事実発覚!

 上のように、さなぎ小夜子の存在はこれまで一例も確認されておらず、小夜子=昆虫説最大の難点となっていた。だが、今回奇跡的にさなぎのから成虫へ変態する瞬間をとらえることに成功。ついに、長い間謎に包まれていたさなぎ小夜子のベールが剥がされた。以下の写真がそれである。
〈小夜子着皮写真〉
←左図:さなぎから成虫へ着皮する小夜子

 写真右下に見える黒い物体がさなぎ小夜子である。ここで注目すべきは、あたかも「小夜子は皮を脱ぎ捨てるのではなく、逆に新たなる皮を身にまとっている」ように見えるということである。さなぎが、『六番目の小夜子』というタイトルが書かれた表紙を体にまきつけているのだ。これは普通の昆虫で行われる「脱皮」ではなくむしろ「着皮」と呼ぶにふさわしい行為である。以上のような振る舞いは言うまでもなく他の昆虫には見られないことであり、「小夜子」特有のものである。これにより、さなぎ小夜子を確認したはいいのだが、これが昆虫の証であると言えるかどうかについて早くも疑問視する声もあがっているということを付け加えておこう。
なお、これより数時間後に小夜子がさらに赤い帯を「着皮」する様が観察された。ただし、この帯を着皮しなかったり、あるいは模様が少しずつ違っていたりすることから個体差があるのではないかと推測される。雌雄によって違うのではないかという説もあるが、真実はまださだかではない。



Last update: 99/1/3   情報提供待ってます! 新発見がありましたら大熊まで!

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