小夜子徹底比較

ついに、復刊された『六番目の小夜子』。読者が一番気になるのは、「旧小夜子」との違いであろう。実際、作者の恩田は復刊に際して本書を全面的に改稿したと言われている。そこでここでは、両「小夜子」を徹底的に比較することにしたい。
ここでは、比較するに際して曖昧な判断基準や、恣意的な価値の偏りを無くすために、コンピュータの世界でよく使われるベンチマークテストの手法を流用することにした。ベンチマークテストとは、CPUやアプリケーションの速さを計測するために使われる手法のことである。これを両「小夜子」の比較に用いれば、かなりの公正さを保てるはずである。


●起動速度

パソコン等を使っていて一番気になるのはOSやソフトの起動速度。これこそが、製品を評価するうえで欠かせない第一のファクターであるということは言うまでもあるまい。ここでは、小説の実質的な「起動」と言える主人公、「津村沙世子」の5文字が現れるまでの、最初のページからの文字数を比較してみた。

起動速度(単位:文字)
旧小夜子
4994
新小夜子
5924

……なんと、約千文字という大差をつけて「旧小夜子」が圧倒的な速さをみせつけた。やはり、バージョンアップのために余計な機能を付加してしまったことがたたったのであろうか?


●描画枚数

やはり、ユーザーが最も気になることと言えば、グラフィック面の強化。そこで、両小夜子に使用されている絵の総数を比較してみた。

描画数(単位:枚)
旧小夜子
6
新小夜子
1

なんと、これまた「旧小夜子」の圧倒的勝利。やはり、挿絵の有無が響いたようだ。それにしても、「新小夜子」が一冊中に一枚しかグラフィックを描けないというのは、その性能に大きな疑問を抱かざるを得ない。なお、「新小夜子」の場合、裏表紙にも絵があるのだが、表紙と同様のグラフィックを使い回しているという判断の元に、数にはいれなかった。ズルはよくないぞ、小夜子。


●メモリー使用量

やはり、アプリケーションを使っていて気になるのは、それがどれだけのメモリーを必要としているかであろう。特に本のように持ち運びすることがある場合、それが鞄の中でどれだけのスペースを必要とするかは読者の負担を大きく左右する。そこで、それぞれの「小夜子」の体積を比較してみた。

メモリー使用量(単位:立方cm)
旧小夜子
15*10.5*1.3 = 204.75
新小夜子
20*14*2 = 560

ここでも、「旧小夜子」の圧倒的な勝利。「新小夜子」と比べて2分の1以下というコンパクトさを誇っている。しかも、上記のような、圧倒的な性能の良さを見せつけているのだ。おそるべし、「旧小夜子」。


●ディスク使用量

ここまでの比較を見る限り、「新小夜子」は「旧小夜子」と比べてかなり鈍重になっていると思われる。おそらく、これはアプリケーション自体が肥大化してしまっているせいであろう。そこで、インストールする際にどれだけのディスクを使用するかをそれぞれの重さで比較してみる。

重さ(単位:グラム)
旧小夜子
180
新小夜子
390

ここでも「新小夜子」が「旧小夜子」と比べて2倍以上の重さがあることが判明した。やはり、外見を良くするために、ハードカヴァーにしてしまったことがその原因であろう。


―― 総論 ――

「サヨコ・ベンチマーク」による厳正な審査は、意外にも「旧小夜子」の圧倒的な勝利で幕を閉じた。これでは果たして恩田の改稿が正しかったのか、疑問に思わざる得ない。たしかに、付属するソフトが「旧小夜子」では、作者のよくわからんあとがきであるのに対して「新小夜子」では綾辻行人の解説である、というアドヴァンテージはあるものの、中身が重くてはその価値も色あせてしまう。
残念ながら、「改悪」という結果になってしまった「新小夜子」。しかし、本としての魅力はまだまだ他の小説よりは断然上であるのもまた事実だ。書いていてすごく苦しいフォローのような気がしてきたが、とにかくっ! 是非是非「新小夜子」を購入することを強く勧めたい。だって、みんな「よくない」と言われているのに、Win98をインストールしちゃっているわけでしょ? あれに比べれば、遙かにましじゃないですか。

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