跳躍の黙示録
『スキップ』
北村薫/新潮社

「君は『スキップ』を読んでどんな印象を受けた?」
「……うーん、なんか、納得がいかないわ」
「と、いうと?」
「やっぱり、設定。だって、どう考えても生徒がいきなり先生になれるわけがないと思うもの」
「確かに、君がそう考えてしまうのも尤もだ。だが、果たしてそれが本当に不自然なことだろうか」
「不自然よ」
「そうだろうか? 考えてもみてごらん、世の中には13歳にも関わらず、人型決戦兵器に乗って使徒と戦う少年少女もいるんだ。それに比べれば17歳の女子高生が先生をすることくらいは何でもないだろう」
「う……。そ、そんなこといっても……」
「いいかい。問題はそこにはないんだ。推理を組み立てるべき支点は別のところにある」
「どこにあるのよ。その支点とやらは」
「その前に、この作品は少なからずの読者からの拒絶反応を受けていることは知っているね」
「ええ、知ってるわ。あちこちで罵倒の声を聞くもの」
「でも、ここでちょっと考えてみて欲しい。これら『スキップ』否定論者の男女比が仮に1対1だとしよう」
「だとすると、どうなるの」
「こんなことを考えてみて欲しい。もし、主人公がタイムスリップしたのが42歳ではなくて、20代の独身美人女教師だったとしたら、この作品を罵倒する者は最低でも5割に減るのではないのか……と」
「???」
「そう、問題は『年齢』にあるんだ。だから、推理すべき支点とはまさに『歪められた年齢』にある」
「どういうこと?」
「まず『歪められた年齢』について本質直観してみよう。『年齢』まさに、それは人々が隠したいと思っているもの、そのものなんだ。人々が背負っている罪。あるいは業。そういったものが年とともにまるで船にへばりつく貝殻のように増えてゆく。そう、いわば『恥』の象徴とも言うべきものが年齢なんだ。我々がしばしば年齢を詐称するのは決して自らを若く見せかけたいからではない。自分が背負っている罪をすこしでも少なくしたい無意識の現れだからなのだ」
「それが『スキップ』と、どーやって結びつくのよ」


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