「星ぼしのフロンティアへ」(SFマガジン 9月臨時増刊号)

星ぼしのフロンティア興亡記

のうがき

 まるで「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」公開に合わせたたかのごとく(って合わせたんだろうけど)、刊行されたSFマガジン増刊号「星ぼしのフロンティアへ」。様々なSF作家のスペース・オペラ短編がぎっしり詰まっていて、しかも表紙が鶴田謙二。……ということで、思わず買っちゃった人も結構いるのではなかろうか。なにを隠そう私もその一人である。で、ようやく最近読了したのだが、なんか後ろの掲載作になればなるほど面白くなっていくような気が……。いや、それって逆に言えば、冒頭に近ければ近いほど(以下略。ごほん)。
 ……それはともかく、実はこのムック以外で最近まっとうに読んだSFってほとんどなかったりする。そんなわけで、せっかくだから久しぶりにレビューを書いてみようと考えたのだった。

「星ぼしのフロンティアへ」という大叙事詩

 ……が、ここ一ヶ月ほどまともな文章は何ひとつ書いていない(ページを全然更新していないともいう)こともあって、果たしてまっとうなレビューが欠けるかどうかひじょーに不安であった。まあ、これまでまっとうなレビューを書いたことが一度でもあったのか、という疑問もあるのだけれど。
 そこで、レビュー執筆のために改めてこのムックを読み返してみたのだが、その際、一つの疑問がわいてきた。
 すなわちそれは――「『星ぼしのフロンティア』に掲載されている短編同士って、もしかしてつながりがあるのではないか? これって、一種のモザイクノベルではないのか?」――というものだ。
 そんな馬鹿な、と思われるかもしれない。どうやって、高千穂遙と森岡浩之とポール・アンダースンとキース・ローマーと野尻抱介が共同でモザイク・ノベルを執筆できるというのか。そんなの、どう考えてもありえない。
 そう、あなたの反論は実に正しい。私も自分が出した結論にまだ半信半疑でいる。だが、それでもそれぞれの掲載作を子細に分析していくと、ひとつの大きな――それは叙事詩とも言うべき――物語があらわれてくるのだ。

 そこで今回は急遽予定を変更し、レビューではなくて、「星ぼしのフロンティアへ」に描かれている大いなる叙事詩のあらすじを紹介したいと思う。ただし、ここで紹介するのは、非常に大ざっぱなアウトラインである。詳しくは、個々の作品を読んでみて(あるいは読み返してみて)ほしい。

……なお、あわせて収録作一覧を作成したので、参照していただきたい。なお、私は今回このムックに寄稿した作家たちは、なんらかの秘密のつながり(例えばフリー・メーソンとか)があると考えるべきではないのかと疑っている。

「星ぼしのフロンティアへ」のアウトライン

 先にも述べたとおり、ここで紹介するのはあくまでもごくごく大ざっぱなあらすじである。しかしそれでもかなり量的に多くなることもあり、年代順に大きく6つに分けることにした。

黎明期

 人類の欲望、情念といったものが次第にかたちをとり、怨霊のごとく宇宙へただよい始める。→「恐怖! 金平糖錨地・怨霊騒動」
 さらに、「彼ら」は自らの力を得るために、生きているものの情念を利用し、まるでウイルスのごとく増殖しよう試みはじめる。→「わが名はジュディ、文句あるか」

共存期

 しかしながら、人間と敵対して増殖しようとするのはあまり効率的なことではない。そこで、逆に人間と共存することによって自らの勢力を拡大することを目指し始める。たまに、仲人みたいなこともしちゃったりする。→「逝きしものの湖」
 あるいは、人間とそっくりのかたちをとってみたりもする(自らのアイデンティティを守るため、髪は青く染めていたが)。→「蒐集」

独立期

 が、人間との共存も長くは続かなかった。なぜなら、人間はそもそもか弱く、それどころおつむも結構弱く、結構つまんない存在だということが判明したからである。必然的に「彼ら」は、「自分たちの方が高等なのではないか?」という結論に達することになる。「じゃあ、俺らが人間に合わせるこたないじゃん」。というわけで「彼ら」は自らの姿態をより自由な形へと変えてゆくことにした。→「総花的解決」
 で、姿を変えれば変えるほど、自分がたちがよりパワーアップできると気づくにはそれほどの時間はかからなかった。「人間って、なんて馬鹿で無知蒙昧で非生産的な生き物なんだろう」……ただ、いい気になりすぎて、手痛いしっぺ返しをくらったこともあったりする。→「栄光のゲーム」

敵対期

 そうこうしているうちに、どうも自分たちが生きていくには人間は邪魔な存在であると主張する一派がでてきた。「だってさあ、あいつら下等生物の癖して、俺たちにさからうんだぜ」。こうして、「彼ら」の「人類全滅計画」が発動することになる。→「鋼鉄の殺戮者」
 だが、「そんなに人類をいじめるなんて、ひどいことは慎むべきだよ」と主張する優しいものたちもでてきて、両者の間で喧嘩がはじまる。さらにその喧嘩に人間が巻き込まれたりもする。→「超機甲戦士・野谷」

全滅期

 というわけで、(人類にとっては)良きグループによって、悪きグループは宇宙の彼方へ追放された。だが、「彼ら」は虎視眈々と人間と太陽系を狙っていたのだ。→「太陽の簒奪者」
 だが、どうやっても人類を倒すことができない。「彼ら」は考えた。「なぜ、俺たちはこんなに頭がいいのに、奴らに負けてばかりなのだろうか。……もしかして、頭の善し悪しと強さは関係ないのかもしれない。いや、むしろお馬鹿な方が強いのかも!」  そこで「彼ら」は理性より本能を知識欲よりも食欲を求める下等生物に自らを改造することにした。こうした「彼ら」の執念によってみごと人類は絶滅することになる。→「銀河を駆ける呪詛」

人類の再発見

 が、しかし、「彼ら」は一つ重大なことを忘れていた。「彼ら」はしょせん、作者の手によって作られたフィクションだということを。ようは「作者」さえよければ、例え理不尽なことでも起こりうる可能性があるということを。
 てなわけで、作者のきまぐれによって、人類は今一度復活したのでした。→「天使の悪戯」


収録作一覧(掲載順)