Book of Days 11

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10月30日  東京ファンタ前夜

 本来、11月の日記は11月1日以降からはじまるわけだが、東京ファンタネタを一カ所にまとめておきたいので、今日からを11月の日記のはじまりとしたい。
 さて、ファンタである。なんと、明日になるとオープニングになるのである。はやいなー。10月のはじめにチケットを買ってから、あれよあれよという間に月日は流れ、お祭り騒ぎの1週間を迎えることになってしまった。ただでさえ、体調がイマイチなので、今年は五体満足で乗り切れるかどうか、とても不安である。あー、頭がクラクラしてきた。最近ちょっと出歩いただけで、ぐったりしちゃうんだよなあ。オールナイトなんて、本当に眠らずに過ごせるのか?
 とまあ、そんな状態なので、ファンタ開催期間中に「SF-OB LINE」で、ファンタレポートをアップできるかどうか自信がない(すみません。結局オープニングまでしかアップできませんでした)。しかし、ファンタが終わったら、疲労困憊でなんにもしたくなくなるだろうから、結局レポートは完結せず「SFオンライン」に先を越されるというのは何としても避けたい。……と、いうことは事前に原稿をあげるしかないのではないか? と、いう結論に達した。適当にレビューを書いておいて、映画を観終わった後に内容にあわせて記述を変更すれば、期間中の負担が大幅に減る。よし、これだ。これでいこう!
 っていうわけで、いざ原稿を書こうと決心したそのとき。突然、私の元にとある情報が入ってきた。な、なんと恩田の新刊が出たらしいのだ。タイトルは『象と耳鳴り』(詳伝社)、連作短編集らしい。うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。しかも、数日前から既に平積みされていたんですってええええええええええええええええ。しょっくううううううううううううううううううううう! あまりにものショックのために、もはやファンタレポートなんてどーでもよくなっていたのだった。頭にあるのは、なんとしても朝一で恩田の新刊を手に入れることだけ。茫然自失とはまさにこのことである。こんな状態で、果たしてファンタレポートが書けるのか? しかも、東洋大学SF研の掲示板を見ると邪悪な林さんが何か書いてるし。てんやわんやのまま、オープニングが刻一刻と迫っていった。つづく。


10月31日――その1  東京ファンタオープニング

 そしてそして、ついに運命の朝がやってきた。当然私の頭には今日がファンタのオープニングであるという興奮はカケラもなくて、とにかくく恩田だ恩田! とっとと『象と耳鳴り』を買わねばあああああ。という意識のみ。
 ってわけで、とっとと書店へ行って探してみたのだが……ない。夢にまで見た(みてねーよ。ロクに寝てなかったし)恩田の新刊がない。なんということだろう。きっとこれは私を邪魔しようとする奴の企みに違いない。ということで、仮想敵として林さんを設定することになぜか大決定。……林さん、僕は林さんにはとてもおせわになりました。あなたに教えていただいたことはあまりにも多く、おなたが与えてくれたものははかりしれないほど。でも、でも、この仕打ちはあんまりじゃないでショッカー。こんなに欲しい本を買い占めてしまうなんて。なんて、なんてひどい人だ!(←完全に妄想入ってます)しかし、しかしである。この世に書店はたくさんあるのだった。というわけで、駅の反対側にある比較的大きな書店へゆくことにする。ああ、果たしてここは林さんの魔の手から逃げ延びているのであろうか? ……本棚を血眼で探し回った結果……あった! ありましたよ。一冊だけ。シンプルで品のいい緑の表紙に『象と耳鳴り』というタイトルと「恩田陸」という名前が刻み込まれている。これだ、私が探しているのはまさにこれだあああああ!!!! 夢じゃないんだああ。思わず狂喜乱舞してしまう私。こうして、悪は潰え、正義は勝つという典型的な大団円を迎えるはずだったのだが……あのー、この本、すでに帯やカヴァーが汚れているんですが。もともとこの本は白い部分が多いので、汚れが目立ってしまう。帯なんてそこかしこが黒ずんでいるのである。これではとてもではないが、レジへ持っていくきにはならない。やっぱ、汚れ無き恩田の本なんだからなるべく綺麗な状態で購入したいよね。これじゃあ、ちょっと買う気になれないなあ。がっかり。……(やおら顔を上げて)……そうか、これが林さんの手だったのか! まずは、本を買い占め、次に汚い本を一冊だけおいておき、私を追いつめようという作戦に違いない! なんて邪悪な人なんだ!
 こうして新たなる怒りを胸に、私は一路川崎に向かうことにした。こうなったらとことんまで、『象と耳鳴り』と心中してやろうじゃないか! というわけで、川崎に新たにできた紀伊国屋書店へ向かう。ここなら林さんは見逃してしまっているにちがいない。
 ……で、ここでもやっぱり『象と耳鳴り』がなかったらさらにドラマチックになったと思うのだが、あっさり平積みされてました。いやーよかった。川崎の主要書店でみつからなかったら神保町まで行こうとか思っていたんだけど、そこまでしなくてすんでまずはめでたい。
が、時刻はすでに12時を回っていた。ファンタ開幕まであと6時間しかない。果たして大熊は無事まっとうな精神状態に復帰して会場へ駆けつけることができるのだろうか。つづく。


10月31日――その2  東京ファンタオープニング

 そんなこんなで、もはやファンタなんてどーでもいいという心境になっていたのだが、とにもかくにもさっさと家でやり残したことをしなくてはなるまい。まずは、「SF-OB LINE」の更新準備。オールナイト終了後ただちに、レポートをアップしたいので、それ以外のコンテンツを完成させておかないとまずいのだ。本当は前夜祭に参加した後輩に電話して、簡単な感想を言ってもらいそれもアップしたかったのだが、結局連絡はとれなかった。多分爆睡中なんだろう。くそっ。
 とかなんとかじたばたしているうちに時刻は午後5時をまわろうとしていたのだった。やべえ、そろそろ出かけないと。だいたいこの日は林さんと待ち合わせをしているので、遅れてしまったらご迷惑をおかけてしまう(すでにブツは手に入ったので仮想敵モードは解除済み)。あわてて、眠い目をこすりながら一路渋谷へと向かう。あー忙しい。しかし、それでも、今年は実にラクだ。なんせオープニングとオールナイトはどちらも指定席なので事前に並ぶ必要がない。例年だったら、午後4時にはパンテオンの非常階段で並んでいなけりゃならないはずなのだが今回は直前まで自宅周辺でバカやっていられるんだからなあ。でも、どうも並ばないといまいち気分が盛り上がらないという気もする。うーんどっちがいいんだか。……とかアホなことを考えるうちにいつのまにか渋谷駅到着。うひゃー、『象と耳鳴り』全然読んでないよ。参ったなあ。恩田とファンタに板挟み状態のまま、改札口を通り、いよいよ東急文化会館への通路に足を踏み出す。その瞬間、周囲の光景が一転した。通路の窓を通して、夕闇に東急文化会館がそびえたっている。そこには上映中の映画にまじって「東京国際ファンタスティック映画祭」の文字を冠した看板がライトアップされて見える。そうだ、ついに、ようやく、私は戻ってきたのだ。あの、東京ファンタへ。つづく。


10月31日――その3  東京ファンタオープニング

 感度もさめやらぬうちに、待ち合わせ場所の三省堂へとすっとんで行く。それまで眠気と疲労で重かった体がうそのように軽快に動く。書店へたどりつき辺りを見回すと、すでに林さんはいらっしゃっていた。時刻はもう18時を回っていたので、いそいで階段を降りてパンテオンへと向かう。
 今年はオープニングは二階席で観ることになっていた。二階へ行くのは初めてなので、結構新鮮。行ってみると席はなんと後ろから2列目の右よりとなっている。うわー、本当にぎりぎりのタイミングでチケットを手に入れたんだなー。あと10分遅れていたらどうなったことか。しかし、これだけ後ろだというのにスクリーンが全然小さく見えないのはさすがパンテオンというべきか。一回席を埋め尽くしている大勢のファンを見ながら、ふと私は林さんに話しかけた。
「いやー、しかし今日は大変でしたよ。『象と耳鳴り』がなかなかみつからなくって」
「へー。そう? そこらへんの書店で平積みされてたよ」
「(あんたが買い占めてたんだろうが)そうですかー。私まだ最初の2編くらいしか読んでないんですよ。林さんはもう読了されているんですよねー」
全然。っていうか、ミステリなんぞに興味はないので、買ってもいないね
なんですってえええええええええええええええええ!!!!
 私は呆然とした。なんということだろう。なんていう人だろうか。これだけ人を苦しめておいて(おいおい)、自分は偉大なる恩田陸の本を買っていないとは!!! 林さんなんて、林さんなんて、恩田ファン失格だあああああああ!
「いや僕は別に恩田ファンでもなんでもないので」
 瞬間、私は我を忘れた。恩田の敵は私の敵! 私は林さんにつかみかかっていった。林さんの襟首をひっつかみ、力任せに引っ張ったのだ。が、そもそもファンタで浮かれていたとは言え、非力な私のこと、うっかりそのまま足をすべらせてしまう。二人はそのまま2階の階段を転げ落ちていった。そして、二階席の一番前の手すりに激突する。
 だが、この手すりはどうやら工事中でもろくなっていたらしい。なんと、林さんと私の体重を支えきれずそのままあっけなく崩れてしまったのだ。あっというまに二人は一階へとまっさかさまに落下していった。そして、そのままの格好で一階の床にたたきつけられることになる。二人の頭からおびただしいほどの血がほとばしった。さながら、柘榴のごとく。つづく。


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