SFマガジン 2005年1月号
[特集:アメリカ現代社会とSF]
[追悼:矢野徹]
さまよえる騎士団の伝説 矢野徹
初出:<S-Fマガジン>一九七四年二月号
(イラストレーション・佐治嘉隆)
ボンの大学でドイツ中世史を学んでいた主人公は、ノルマンズドルフに伝わる騎士団の伝説を耳にする。それは、閏年2月29日の夜、霧がかかった大通りを騎士団の幻が進んでゆく、というものだった。しかも、この幻を見た者は彼らに連れ去られ、永遠に戻ってこれなくなるという。
この伝説に興味を持った主人公は、紹介者のH(金髪の美女)とともに、現地で2月29日の夜を明かすことにするのだが……。
密かに主人公に思いを寄せる金髪美女の描写が、いかにもひとむかし前の小説っぽいのが印象的な一作。霧の中からあらわれる騎士団の亡霊というのはなかなかよいと思うのだが、彼らにまつわる謎やそれを解き明かしていく過程がやや安直だったのが残念。これが笠井潔だったらそのまま矢吹駆シリーズの一遍として、面白いミステリに仕立て上げてくれたんじゃないかなーとか思ってしまった。(性格がぜんぜん違いますが)主人公が駆でヒロインHがナディアみたいな。
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[特集:アメリカ現代社会とSF]
ヘッドラインのマジック The Headline Trick
初出:Rabid Transit: A Mischief of Rats (Velocity Press, 2003)
ダグラス・レイン Douglas Lain/小川隆訳
(イラストレーション・栗原祐孝)
悪いニュースのヘッドラインを集めて一儲けする人物を狂言回しにして、アメリカの社会問題をえぐり出そうとしてるっぽい一作。でも、これじゃあ、SFに政治を持ち込んでくれるな、という声が出てくるのもわかるなあ。と、読了した直後は思ったものだが、次の収録作である「パンと爆弾」を読んだ後だと、割と含蓄がありそうな気がしてきた。ということで、二作続けて一気に読むことをお勧めしたい。
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[特集:アメリカ現代社会とSF]
パンと爆弾 Bread and Bombs
初出:<F&SF>二〇〇三年四月号
M・リッカート M Reckert/小野田和子訳
(イラストレーション・おがわさとし)
何らかの紛争によって荒れ果てたアメリカ(らしき場所)にやってきた女の子たちと、ある悲劇の物語。
「ね、お嬢ちゃん、世のなかには、あんたが知らないことがたくさんあるの。昔は、世界は安全なところだったのに、それが、ある日、そうじゃなくなった。あの連中が」と母はキッチンの窓からまっすぐにミラー家のほうを指したが、ミラー家のことをいっているのでないことは、わたしにもわかっていた。「はじめたのよ」
「ただの子供だよ」
「そりゃあ、あのふたりがそうといってるわけじゃないわ。あの子たちの国のことをいっているのよ(略)」
と、いうくだりを読んで、「昔は、世界は安全なところだったのに」じゃなくって、「アメリカは安全なところだったのに」じゃないのか、とか、かつて他の国家を危険にしたこともあるくせに、とかツッコミを入れてしまった。ただ、結末を読むと、作者の視点はもっと深いところにあることがわかるわけだが。今回の収録作のなかではベストな出来。
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[読切]
風に乗って 草上仁
(イラストレーション・イトウユミコ)
居留地に自由意志で滞在している『ゲスト』たち。地球人たちは、彼ら――レロズ星系の現地人――をなんとしてでも隔離しておく必要があった。銀河連邦より、資源開発の権利を獲得するために。
宇宙に進出して間もない人類が、銀河連邦に組み込まれ四苦八苦しているという状況や、現地人の奇妙な生態といったバックグラウンドはとても面白そうなのに、意外性のかけらもない平凡な物語によって完全にスポイルされてしまっているのが残念。今回の話は完全にボツということにして、連作短編化を希望。
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[読切]
午前の幽霊〈前編〉 津原泰水
(イラストレーション・森山由海)
夢幻泡影 第2章 とのことだが、第1章は未読のため、感想省略。
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[読切]
禍つ星〈後編〉 The Plague Star
初出:<アナログ>一九八五年一月号、二月号
ジョージ・R・R・マーティン George R.R.Martin/酒井昭伸訳
(イラストレーション・末弥純)
お目当ての胚種船〈方舟〉号に侵入した登場人物たちが、船の主導権をかけて戦いを始めるお話。ロクでもない連中がロクでもないことをするというのは読んでいて実に楽しいですね。
ただ、今回のSFMに収録された他の短編のタッチが比較的固めだったため、どうしても本作が浮いている印象を受けてしまった。やっぱり、前号でまとめて掲載しちゃった方がよかったんじゃないかなあ。「地球の裏側」と「ワーク・シェアリング」はボツにして。
[翻訳連載企画「浅倉久志セレクション」第4回]
心にひそむもの The Analogues
初出:<アスタウンディング>一九五二年一月号、二月号
デーモン・ナイト Damon Knight/浅倉久志訳
(イラストレーション・北見隆)
ドクター・マーティンはある決意を固めて、浅黒い小男と向き合っていた。デモクラシーの信奉者である彼に、なんとしてでも理解を求めなくては。クスコ博士が発明した、犯罪を抑制する効果的な方法を。そして、この方法によって実現される恐るべき未来を……。
冒頭の一節が素晴らしい。なにか不安感を与えるような「目玉」の描写が北見隆のイラストと相まって独特の雰囲気を醸し出している。そしてこれが綺麗にラストに繋がっていくあたりはさすがはデーモン・ナイトと言ったところだろうか。
しかし、ひとつのガジェットによって人や社会そのものが変容してゆく様子を描いているあたりは、なんとなくイーガンちっくかなあと、『万物理論』も読んでいないくせに言ってみる。